怖くて吠えるとき、寂しくて吠えるとき

犬が「吠える」場面はいろいろありますが、この行為は明らかにストレスのサイン。愛犬に照らしてみてください。たとえば、こんなこと。「まだ子犬だったころ、散歩途中で会った大型犬に吠えられて以来、同じ種類の犬が前から歩いてくると吠えるようになってしまって…。ほかの犬には大丈夫なんですけどね」

小さいころにインプットされたイヤな記憶はなかなか抜けないもの。いわゆる「トラウマ」です。「ボクが怖い思いをしたのは、たしか、あんな形の犬だった。また吠えられちゃうんじゃないかって、怖いんだよね…」「この記憶を払拭するには、同じ種類の犬と仲よくなる機会をつくってトラウマを消し去ることが必要ですが、記憶力のいい犬にはなかなかむずかしいものがあります。

主従関係をきりりと確立して、「ご主人がボクを守ってくれる」という関係を築くのが最善策です。「トラウマ」を引きずった、こんな例がありました。

その犬はふだんは従順で、かみついたり吠えたりはしません。ところが、酔った人にはやたらと警戒心を全開にするので困ったと、うちのセンターで面倒を見たことがありました。

聞くと、ふだんはやさしい飼い主が夜に晩酌をして酔うと、とたんに暴力的な対応をしていたらしいのです。それがトラウマとなって、お酒を飲んでいる人、お酒のにおいのする人に接すると、とたんに吠える、かみつくという攻撃的な行動をするようになったということでした。

預かったその日、一杯飲んでいた私はさっそくその被害にあいましたから「酔ったご主人にひどい目にあったから、やられる前に防御しなきゃ!」「その犬は、きっとそう思っていたに違いありません。

だから、吠える、かむという行為に出ていたのでしょう。トラウマを抱えている犬に対しては、「お酒」という一現象から解放するのではなく、初歩からの主従関係を築き直す以外にありません。リーダーウォーク、待て、すわれ…」など、すべてを「ゼロ」に戻す必要がありました。

または、こんな場合。犬は、領域意識」が強く発達していますから、「ボクが生活するエリアには、だれも入れてやらない!ヘンなヤツがやってきたらみんなおっぱらってやるんだ!」

そこでワンワンワンと吠えることになります。玄関のチャイムが鳴ったら吠える、家の前につないでおくと吠える…などは、その典型的な例です。

あるいは、こんなケースもあります。家を留守にして帰宅したら吠えるというのがそれ。

ドアの鍵を開けていると、中からワンワンと吠えている声が聞こえます。そんな状況のとき、犬はこんなふうに考えています。「ボクをひとりぼっちにして出かけちゃって…さ。早く早く、カギを開けて!」これは前にも紹介した分離不安」によるもの。出かけるときに、思いっきり、「おりこうでお留守番しててね。ひとりぼっちにしちゃうけど、すぐに帰ってくるからね」そんな言葉をたっぷり浴びせかけられた犬は、自分が置き去りにされたと思います。

寂しくなるのです。飼い主側からすると、「ひとりでお留守番をさせるのだからかわいそう。ちゃんとすぐに帰ってくることを伝えておかなくちゃ」という思いやりなのでしょうが、これが逆効果になってしまっているのです。

分離不安の犬が、そのストレスを解消しようとしてとる行動はさまざま。グルーミング行動をしたり、家具をかじったりすることもありますが、いわゆるムダ吠え」といわれる行動のストレス度は最高潮に達しています。

犬はきっと、家人が留守の間中、吠えているはずです。そして、帰ってきた飼い主に対しては、よりいっそう、抗議の意味も込めてワンワンワンと吠えます。

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