吠え声がピタリとやむ音楽の効用

こんな犬がいました。よく吠える犬で、玄関のチャイムが鳴るとワンワン、散歩途中でもワンワン。飼い主は、犬がわが家に来たときのころを思い返して嘆きます。

「やっぱり、育て方が悪かったのか…!」そう悩む飼い主もストレスを感じることは多いでしょうが、実は犬のほうがずっとストレスを抱えています。このことは再三お話ししてきました。自分のテリトリーに侵入してくるよそ者には権勢本能を全開にして立ち向かいます。それがワンワンと吠えることにつながっているのですから、安心していられるヒマもないというわけです。

ところが、ある日のこと、玄関のチャイムが鳴っても、犬はワンとも吠えない。「おお、やっと改心してくれたのか…!でも、なぜ?」このときに、いつもと変わったことといえば、「音楽を流していたことくらいだったな
あ…」というわけで、飼い主はこの日から、そのときに流していた音楽、ヴィヴァルデイの「四季」を、ことあるごとにかけてみたそうです。

「それ以降は、玄関のチャイムが鳴っても吠えなくなった。ストレスがなくなったせいか、犬の顔つきも、なんだかやわらいできたように感じるが…」

ヴィヴァルディの「四季」がよかったのか、クラシックがよかったのか、音楽そのものが犬のストレスを解消したのか、科学的な根拠は探れませんが、とにかく、その犬にとっては、心癒す「音」であったことはたしかです。

よく、ピアノを弾くと、それに合わせて歌う犬がいるといったことを聞きます。ピアノに限らず、ある特定の音に反応するという現象はたまにありますが、これは犬の習性に起因したものです。

かつては狩りに出かけた狼たちは互いを呼びあうために遠吠え」を交わしていました。人間には少々悲しげに聞こえる犬の遠吠え。これは仲間を呼び合う犬同士の交信のようなものです。音に反応して歌うのは、おそらく、その音が呼びあうサインとして犬の耳に届いているからでしょう。

ただし、ヴィヴァルディの「四季」を聴いた犬の気持ちがやわらいだ「音」は、それとは少し違います。おそらく、飼い主がその音楽を聴いてゆったりとした気持ちになったり、そうした時間をいっしょに過ごしていたのではないでしょうか。

犬は飼い主の気持ちに敏感です。ストレスを感じている飼い主からは、犬もストレスを受け、気持ちいい、リラックスした状態であれば、同じようにその影響を受けるもの。嗅覚の発達した犬は、飼い主の体温から発するにおいの違いを感じ取っています。

「いっしょに暮らしていれば、それくらいは、わかるものさ!」というぐあいです。こうした日々の環境が条件づけ」となり、ヴィヴァルディの「四季」が流れるとリラックスするようになるというわけです。

「ああ、この曲を聴くと、ストレスが解消されるっ…」一度条件づけされると、犬は賢い動物。飼い主が一緒にいなくても、その曲を聴くと、犬の頭の中では、いっしょにいた状態が再現されます。

この条件づけを日々の暮らしに応用するとしたら、これ。
「お留守番をさせるときに、音楽をかけるんでしょ!」そのとおりです。群れで過ごす習性を持つ犬は、ひとりぼっちがあまり得意ではありません。家族が誰もいない家でひとりで留守番するのはつらい。

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