愛犬と一緒に水泳を楽しむ

犬にはそもそも、持って生まれた「得意技」があります。ボーダーコリーは羊を追い込むのが得意、ゴールデンレトリーバーは狩猟犬として、猟得た獲物をくわえて持ち帰るのが得意、水猟犬もいます。その代表がラブラドールレトリーバー。泳ぎの得意なラブラドールレトリーバーは、海辺でも川でも、得意げに泳ぎはじめますが…。「
「犬かき」というくらいですから、犬はみんな泳ぐことが得意だと思っています。ところが、そうではない犬も、実はいるのです。そんな犬を、いきなり水辺に連れて行って、「さあ、泳げ」といってもムリな話。

「波のうねりも怖がらず、スイスイと泳ぐ。一緒にサーフィンするのが夢…」その夢を実現するには、まず、水に慣らすことからはじめます。

犬にとっては飼い主と関わってなにかをすることは、すべて遊びになります。「水は怖い」というトラウマを植えつけないかぎり、すべては楽しい遊び。水遊びがトラウマにならないように、けっしてムリ強いはしない。その一点だけを気をつけましょう。

水に慣らす方法はいくつかありますが、まずは家の中ではじめましょう。小型犬なら洗面器、大型犬なら、たらいやビニール製の子ども用プールを使います。お風呂場でもできますし、庭先でも、ベランダでもはじめられます。

容器に水を張ったら、飼い主は犬の好物を持って呼び、その手を水面に近づけて「よし」。つまり、「食べていいよ」というサインを出します。

ここで犬がすんなりと食べればOK。少し躊躇する様子が見られたら、手を水面から遠ざけて、「よし」。これを繰り返して、より水面に近いところで好物を食べさせるようにしこの段階をクリアしたら、次のステップへ進みます。

まず、好物を持った手を水面に沈めます。水の中にある好物を食べるためには、犬の顔は水面にふれることになりますが、このときまたも躊躇するようなら、食べることができた位置まで逆戻りして、再び沈めます。

本来、犬は鼻先や顔を水の中に入れることは得意ではありませんが、一度はびっくりした犬も、2回目ともなれば、「好物を食べるためなんだから、鼻先がちょっとぬれたくらい平気さ!」と慣れてきますから、次はさらに好物を沈めても「パクッ!」。このときは、できれば足先だけは水につけるように、洗面器やプールの中に入れておいてからやるようにするといいでしょう。子犬のころからシャンプーに慣れていれば問題はありません。

顔が水にぬれることに慣れたら、今度は水面をパシャパシャさせてみる。「動く水面」にも慣れてきたら、ここではじめて水辺に連れて行きましょう。最初は水際で。犬も飼い主もいっしょに水遊びを楽しんでください。ボールや木切れで遊ぶことが上手なら、まず、それを楽しみましょう。

水の中に顔をつけることがすでにできているわけですから、ボールや木切れが水中に浮いている状態でも、くわえて持ってくる「遊び」は十分にできるはずです。「こんな遊び、はじめて!わ~い、楽しいな~」それにはまず、飼い主がお手本を示します。砂浜から水際へ走ります。

吠え声がピタリとやむ音楽の効用

こんな犬がいました。よく吠える犬で、玄関のチャイムが鳴るとワンワン、散歩途中でもワンワン。飼い主は、犬がわが家に来たときのころを思い返して嘆きます。

「やっぱり、育て方が悪かったのか…!」そう悩む飼い主もストレスを感じることは多いでしょうが、実は犬のほうがずっとストレスを抱えています。このことは再三お話ししてきました。自分のテリトリーに侵入してくるよそ者には権勢本能を全開にして立ち向かいます。それがワンワンと吠えることにつながっているのですから、安心していられるヒマもないというわけです。

ところが、ある日のこと、玄関のチャイムが鳴っても、犬はワンとも吠えない。「おお、やっと改心してくれたのか…!でも、なぜ?」このときに、いつもと変わったことといえば、「音楽を流していたことくらいだったな
あ…」というわけで、飼い主はこの日から、そのときに流していた音楽、ヴィヴァルデイの「四季」を、ことあるごとにかけてみたそうです。

「それ以降は、玄関のチャイムが鳴っても吠えなくなった。ストレスがなくなったせいか、犬の顔つきも、なんだかやわらいできたように感じるが…」

ヴィヴァルディの「四季」がよかったのか、クラシックがよかったのか、音楽そのものが犬のストレスを解消したのか、科学的な根拠は探れませんが、とにかく、その犬にとっては、心癒す「音」であったことはたしかです。

よく、ピアノを弾くと、それに合わせて歌う犬がいるといったことを聞きます。ピアノに限らず、ある特定の音に反応するという現象はたまにありますが、これは犬の習性に起因したものです。

かつては狩りに出かけた狼たちは互いを呼びあうために遠吠え」を交わしていました。人間には少々悲しげに聞こえる犬の遠吠え。これは仲間を呼び合う犬同士の交信のようなものです。音に反応して歌うのは、おそらく、その音が呼びあうサインとして犬の耳に届いているからでしょう。

ただし、ヴィヴァルディの「四季」を聴いた犬の気持ちがやわらいだ「音」は、それとは少し違います。おそらく、飼い主がその音楽を聴いてゆったりとした気持ちになったり、そうした時間をいっしょに過ごしていたのではないでしょうか。

犬は飼い主の気持ちに敏感です。ストレスを感じている飼い主からは、犬もストレスを受け、気持ちいい、リラックスした状態であれば、同じようにその影響を受けるもの。嗅覚の発達した犬は、飼い主の体温から発するにおいの違いを感じ取っています。

「いっしょに暮らしていれば、それくらいは、わかるものさ!」というぐあいです。こうした日々の環境が条件づけ」となり、ヴィヴァルディの「四季」が流れるとリラックスするようになるというわけです。

「ああ、この曲を聴くと、ストレスが解消されるっ…」一度条件づけされると、犬は賢い動物。飼い主が一緒にいなくても、その曲を聴くと、犬の頭の中では、いっしょにいた状態が再現されます。

この条件づけを日々の暮らしに応用するとしたら、これ。
「お留守番をさせるときに、音楽をかけるんでしょ!」そのとおりです。群れで過ごす習性を持つ犬は、ひとりぼっちがあまり得意ではありません。家族が誰もいない家でひとりで留守番するのはつらい。

怖くて吠えるとき、寂しくて吠えるとき

犬が「吠える」場面はいろいろありますが、この行為は明らかにストレスのサイン。愛犬に照らしてみてください。たとえば、こんなこと。「まだ子犬だったころ、散歩途中で会った大型犬に吠えられて以来、同じ種類の犬が前から歩いてくると吠えるようになってしまって…。ほかの犬には大丈夫なんですけどね」

小さいころにインプットされたイヤな記憶はなかなか抜けないもの。いわゆる「トラウマ」です。「ボクが怖い思いをしたのは、たしか、あんな形の犬だった。また吠えられちゃうんじゃないかって、怖いんだよね…」「この記憶を払拭するには、同じ種類の犬と仲よくなる機会をつくってトラウマを消し去ることが必要ですが、記憶力のいい犬にはなかなかむずかしいものがあります。

主従関係をきりりと確立して、「ご主人がボクを守ってくれる」という関係を築くのが最善策です。「トラウマ」を引きずった、こんな例がありました。

その犬はふだんは従順で、かみついたり吠えたりはしません。ところが、酔った人にはやたらと警戒心を全開にするので困ったと、うちのセンターで面倒を見たことがありました。

聞くと、ふだんはやさしい飼い主が夜に晩酌をして酔うと、とたんに暴力的な対応をしていたらしいのです。それがトラウマとなって、お酒を飲んでいる人、お酒のにおいのする人に接すると、とたんに吠える、かみつくという攻撃的な行動をするようになったということでした。

預かったその日、一杯飲んでいた私はさっそくその被害にあいましたから「酔ったご主人にひどい目にあったから、やられる前に防御しなきゃ!」「その犬は、きっとそう思っていたに違いありません。

だから、吠える、かむという行為に出ていたのでしょう。トラウマを抱えている犬に対しては、「お酒」という一現象から解放するのではなく、初歩からの主従関係を築き直す以外にありません。リーダーウォーク、待て、すわれ…」など、すべてを「ゼロ」に戻す必要がありました。

または、こんな場合。犬は、領域意識」が強く発達していますから、「ボクが生活するエリアには、だれも入れてやらない!ヘンなヤツがやってきたらみんなおっぱらってやるんだ!」

そこでワンワンワンと吠えることになります。玄関のチャイムが鳴ったら吠える、家の前につないでおくと吠える…などは、その典型的な例です。

あるいは、こんなケースもあります。家を留守にして帰宅したら吠えるというのがそれ。

ドアの鍵を開けていると、中からワンワンと吠えている声が聞こえます。そんな状況のとき、犬はこんなふうに考えています。「ボクをひとりぼっちにして出かけちゃって…さ。早く早く、カギを開けて!」これは前にも紹介した分離不安」によるもの。出かけるときに、思いっきり、「おりこうでお留守番しててね。ひとりぼっちにしちゃうけど、すぐに帰ってくるからね」そんな言葉をたっぷり浴びせかけられた犬は、自分が置き去りにされたと思います。

寂しくなるのです。飼い主側からすると、「ひとりでお留守番をさせるのだからかわいそう。ちゃんとすぐに帰ってくることを伝えておかなくちゃ」という思いやりなのでしょうが、これが逆効果になってしまっているのです。

分離不安の犬が、そのストレスを解消しようとしてとる行動はさまざま。グルーミング行動をしたり、家具をかじったりすることもありますが、いわゆるムダ吠え」といわれる行動のストレス度は最高潮に達しています。

犬はきっと、家人が留守の間中、吠えているはずです。そして、帰ってきた飼い主に対しては、よりいっそう、抗議の意味も込めてワンワンワンと吠えます。

エサのあげ方ひとつで信頼関係は決まる

規則正しい食事は健康の基本。異論の余地はありませんが、これは人間の世界の話です。それなのに、多くの飼い主がこの規則正しい食事を愛犬にも当てはめています。もちろん、健康のことを考えて、ということもあるでしょう。しかし、それよりもむしろ、「おなかを空かせてはかわいそう」という思いのほうが、決まった時間にエサを与える理由としては大きいのではありませんか?

家族の食事は多少遅れることがあっても、愛犬の食事タイムは厳守。「だって、家事に追われて、あげるのをちょっと忘れていると、ものすごく映えるんだもの。おなかが空いているのにエサがないって、すごいストレスになるのでは?」

たしかに空腹感とストレスは不可分。腹が減ればイライラするし、神経も逆立ってくる。しかし、これも「人間なら」です。

食事に関して犬がストレスを抱え込む原因は、実はこの飼い主の気遣いにこそあるのです。決まった時間にきちんきちんと食事を与える。信じられないかもしれませんが、そのことが犬にストレスのタネを植え付けていることになっているのです。

飼い主も犬も、お互い生きた者同士。時間がくれば機械が自動的にエサを供給するシステムのもとで犬を育てているのとはわけが違います。決まった時間の食事を心がけてはいても、時間がずれ込むことは往々にしてあります。
前にも話しましたが、犬は時間には敏感ですから、食事時間がずれ込めば、「もう、とっくにメシの時間は過ぎてるじゃないか。なにやってんだ。イライラさせるな」ということになります。このイライラは腹が減っているからではありません。エサが出されるはずの時間に出されないことによるイライラです。

だから、イライラさせないための方法はひとつ。犬に「エサが出される時間」を意識させないことなのです。どうするか?食事の時間を決めないことです。きょう朝の8時にあげたら、明日は9時、翌日は7時半というふうに、飼い主が意識的にエサを与える時間をずらす。こうすると、犬はいつエサが出てくるかわからず、「メシはどうした?なにやってんだ」と要求することはなくなります。

飼い主がくれるときが食事時間だということが擦り込まれれば、食事が遅い、早いということを意識することはなくなって、そのことでストレスを感じることはなくなるわけです。飼い主のほうも、「あっ、大変!もうワンちゃんの食事時間が過ぎちゃってる。早くあげなきゃ」と取りかかっている仕事を一時中断してエサの準備をし、またやりかけの仕事に戻るという時間的なロスから解放されるという寸法ですから、メリットは二重にあるのではないでしょうか。

エサに関してもうひとついえば、私は犬には1日1回の食事で十分だと考えています。「えっ、ウソ!うちでは家族と同じ1日3食なのに…」そんな飼い主が多いかもしれませんが、必要な量を与えれば、1日1回でなんら問題はありません。

犬は一気にエサをかき込みます。これは習性によるもの。野生の犬は獲物をハントして食事にありつきます。生きているのは厳しい自然界ですから、獲物はいつもいるわけではありません。